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「人生を変えるコーヒーの飲み方」

コーヒーと健康の関係



アメリカの医学博士でジャーナリストでもある著者が、コーヒーがもたらす健康への優れた影響をまとめた本です。


新鮮な野菜や赤ワインになどにも含まれるポリフェノールの一種、CGA(クロロゲン酸)が、人体に対して抗酸化作用と抗炎症作用をもたらし、様々な疫病が広がるリスクを減らしてくれることを様々な研究結果や、コーヒーの成分の分析から丁寧に解説しています。

たとえば、

・やせる

これは、カフェインが体の代謝を上げ、更に脂肪に集中して燃やすよう働きかけてくれるから。

しかもフェノール類が体内で新たに作られる脂肪を減らしてくれたり、メラノイジンという抗酸化物質のひとつが消化管に働き余分な脂肪の吸収を抑えるのだそう。

糖尿病予防にも効果的です。


・メンタルヘルスを改善する

カフェイン入りのコーヒーは、うつ病発症率や自殺率を下げるという研究結果も。

自殺率については、コーヒーを飲む人は飲まない人に比べ50% も低いというデータもあるようです。


・フィジカルパフォーマンスを上げる

運動のパワーやスピードを高め、持久力を向上させてくれることが数々の研究で証明されています。

運動がどれぐらいキツく感じるか?のテストでは、運動の1時間前にコーヒーを飲んだ選手は、飲まない選手に比べて楽に感じていたそうです。


また、激しい運動によって、筋肉細胞ではダメージの大きい酸化物質(スーパーオキシド・フリーラジカル)が作りだされますが、コーヒーのCGAはこれを抑えてくれる効果もあるそうです。

さらに、カフェインにより集中力を上げる効果もあるので、長時間にわたって注意力を高め、反応速度をアップさせる効果があります。


・血糖値を下げる

CGA(クロロゲン酸)というポリフェノールの一種が、血糖を下げ、食後のインスリン反応を改善し、炎症を減らすことで糖尿病のリスクを減らします。


・心臓病のリスクを減らす

ただしこれは、CGA入りのコーヒーで、フィルターを通して淹れることが条件。

カフェインが多すぎるとその好条件を打ち消してしまう恐れがあります。

・がんを予防する

口腔(こうくう)、咽頭(いんとう)、肝臓、結腸、前立腺、子宮内膜のがんについてリスクの減少がみられたそうです。

【サイエンティフィック・リポーツによる105の研究論文】など


・アルツハイマー病・パーキンソン病・脳卒中など神経系疾患の予防


ただし、どんなコーヒーでもよいわけではなく、これらの効果が期待できるのはCGAが含まれるコーヒーに限られます。

すなわち、それが「浅煎りまたは中煎り」にした「品質の良いコーヒー豆」だということ。


3-CQAというCGAの有益な成分を分析した実験で、ケニア産のSL28というロースト豆には約24g/kg含むのに対して、スーパーマーケットで売られているコーヒーには、1.8g/kg程度だったという結果が出ているとのこと。

後者の場合は、上述したコーヒーを飲むことで得られるメリットはほぼ享受できず、ただのカフェイン入り飲料と同じになります。

有効成分であるフェノール類が含まれているということが、健康にもたらす効果が期待できる条件になります。


正しく選んで、最良の淹れ方で本当の美味しいコーヒーの作り方を知ることが大切です。




高品質なコーヒー豆であること


生産者や栽培地域、品種の違いや精製法など詳細が明らかになっていて、味の評価が高いスペシャルティコーヒーは、時間や手間をかけて作られることが殆どです。

標高が高く、白夜の寒暖差が大きい赤道付近の地域で育ったコーヒー豆は特に、自然への防御力も高くフェノール類を多く産出するとのこと。

また、熟すのに時間がかかり、成分がより濃厚になり、豊かな風味の美味しくて、かつ栄養価の高いコーヒーに育ちます。


また、同じ生産地でも、農場によってもCGA(3-CQA)の値に差が出るという結果に。

農場主の栽培方法や地面近くの気層の気候、地面の状態などで良質な豆をさらに優れた豆へと進化させる力になっていることがわかりました。

優秀な系統のコーヒーの木を栽培しているからといって極上のコーヒーが生産されるわけではなく、農園主・栽培家によるその土地ならではの環境への細やかな配慮がコーヒーの風味の向上に影響します。

標高、気温、降雨量といった条件が同じである場合、質の違いを生むのは栽培技術だということです。


「健康に良いコーヒー」はすなわち「美味しいコーヒー」であるというシンプルな事実は、コーヒー好きにはやはり嬉しい結果です。



浅煎り・中煎りであること


野菜に火を通しすぎると栄養価が失われてしまうのと同様、コーヒーも深煎りにすると栄養面の効果効能が減ってしまいます。

つまり、身体への効果を期待するなら浅煎り・中煎りのコーヒーを選ぶべきということ。


個人的には「浅煎り=薄いコーヒー」というイメージをお持ちの方は、まだ多いのを実感しています。

シングルオリジンを初めて飲んだときの、チョコレートやキャラメル、バナナやストロベリー…など複雑で繊細でカラフルな味の変化を体験したときの衝撃は忘れられず、当然コストはかかりますが、健康面のメリットと味の良さを考えると(他の食品などに比べて)圧倒的に費用対効果が高いというのも頷けます。



コストについて


コーヒーを単に「嗜好品」として考えるなら、安価なコモディティコーヒーで十分と思う方は多いと思います。(飲み過ぎには注意ですが)

でも今回、コーヒーを「スーパーフード」と捉えることができるということを知って、個人的には中煎り以上でローストしたコーヒーは飲まなくなりましたし、やはり消費者として「高品質な豆を選ぶ」ということは意味のあることだと感じました。

品質に見合った対価を支払うことで、持続可能な栽培法で努力する農園主を応援することは、健康面でみても結局、消費者側に多大な見返りがあるのだと思います。


後世にわたって美味しいコーヒーを飲み続けるためにも、

コーヒーを楽しみながら生産者が多くの手間と費用をかけて栽培・加工しているということを知り、正当な対価を支払うという意識を持つことはとても大切なことだと思っています。


[カフェインの量について]

米食品医薬品局によると、1日400ml,つまりコーヒー4,5杯が「一般的にいって悪い効果をもたらす危険がない量」とされています。

人間の約半数は遺伝的にカフェインの代謝が遅く作用が強く出やすい場合があり、代謝が遅い人であれば、一日2,3杯以下に止めるべきとのこと。

高フェノールコーヒー(クロロゲン酸を多く含む) であれば、カフェインの興奮作用を軽減してくれることがわかっていますが、心臓発作のリスクが増えるという研究結果もあるため飲み過ぎには注意が必要です。

カフェインレスのコーヒーでもCGAは有効という研究結果もあるため、「デカフェの浅煎りコーヒー」を選ぶのもおすすめだそうです。

とはいえ、コーヒーの効果についての研究もまだ続いており、今後情報が変わる可能性はありますし、コーヒーに限らずどんなに良いとされるものも摂り過ぎはやはりおすすめできません。


カフェインのメリット・デメリットも含め上手な付き合い方の解説がありますので、気になる方はぜひ。とても読みやすく、おすすめの一冊です。




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人生を変えるコーヒーの飲み方 / ボブ・アーノット著 (扶桑社)

おすすめ度(※) ★★★★☆



※あくまで主観的なものです




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