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【映画】グリーン・ライ 〜エコの嘘〜





緑のイメージ



「グリーンウォッシング」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?


グリーンウォッシング(Greenwashing)とは、環境に配慮していると見せかけて、実態は全く逆で環境に悪影響を与えている企業 の行動や企業を示す言葉です。「グリーン」は環境、「ウォッシング」は洗濯。緑のイメージでごまかすことを意味します。


私は、SDGsについて詳しく書かれた本を何冊か読み、この言葉を初めて知りました。


(c)e&a film


映画「グリーン・ライ」の監督は、次のように語っています。


フェアトレードや一 般に評判の良い協会や組織の人々に会い、商品がエコのスローガンで覆われているからといって、100 パーセント持続可能なことを意味しないことを発見しました。
と言うのも商品ラベルに表示されている成分のほんの一部が持続可能に生産されているだけでも、持続可能と表示されていたからです。
しばらくして私は、本当に持続可能な商品を販売する会社を見つけることができないことに気付きました。

ヴェルナー・ブーテ(Werner Boote)監督メッセージ より



フェアトレードのおかしな真実



「フェアトレードのおかしな真実」という、エシカルビジネスの背景にある真実に迫ったイギリスのジャーナリストによる著書があります。


この本は、産業化するフェアトレードの実態に疑問を持った著者自身が実際に現地に足を運んで関係者に話を聞き、そのエピソードをまとめたもので、今回の映画と共通する部分が多いと感じました。


ここで、一例として挙げられているのがイギリスのマクドナルドのエピソード。

熱帯雨林を破壊し、動物を虐待し、労働者や子どもたちを搾取しているというチラシをばら撒かれたマクドナルド社が訴訟を起こし、一応勝訴はしたもののイメージは低下。

それから、地産地消やオーガニックの食材、さらにコーヒーの品質にも力を入れ始め、全てのコーヒーをより倫理的な生産者から購入する契約を結んだ…

という内容。



一見、いいことに思え、しかもビジネスで成功しているのだから問題ないように思えます。

ここで指摘されているのは、「倫理的である」という謳い文句そのものがマーケティングの手法であり、実際それが本当なのかという判断を消費者は企業側に委ねている側面があるということ。


さらに、エシカルな商品であると認証ラベルを与える側の団体そのものの問題。

フェアトレードラベルが貼られたコーヒーを作った農家が手にする金額は、私たちが思っているほど高くない。

じゃあ、それはどこへ?


倫理的貿易それ自体が一大産業になったとき、何かが失われるのではないかとも思わずにいられない

引用:「フェアトレードのおかしな真実」コナー・ウッドマン著/ 英治出版



まずは、多くの人が知ること


今回の映画とこの本に共通するのは、一見エコフレンドリーだったり、倫理的だったりする商品の裏にある企業側の「嘘」。

持続可能であるためには、事業を経営して利益を上げなければならない。 でもそれは大企業だけでなく、小さな村や生産者も同じであり、その商品に携わる人すべてが利益を享受できる仕組みでなくてはならない。

今の世界経済システムでは、それが現実的にはとても難しいのだと思います。



(c)e&a film

多くの人々が企業の環境破壊 メカニズムと、欲望に根ざした資本主義の原理を理解すれば、システムを転換出来るかもしれません。
16 世紀に議会制⺠主主義を提唱した⼈々は、夢想家として退けられましたが、今⽇ではそれが多くの国 の政治システムの基礎となっています。
今日、私たちが最も必要としているもの、つまり人間と自然界 の権利を守るためには、⺠主的な世界経済システムを夢⾒なければなりません。

ヴェルナー・ブーテ(Werner Boote)監督メッセージより



この問題を重要視して、実際に勇気ある行動を起こす団体やムーブメントが世界各地で生まれているのも事実。

このような映像を観ることができ、個人の発信や情報のシェアが当たり前になった現代で、小さな消費者のつながりが可能であることも実感しています。



この映画では最後に、世界的に有名な「ある物語」の引用があります。 おそらく、この物語を読んだことがある人なら、ここで引用されることの意外性と同時に「そういうことか!」とある種の感動も得られるのでは。

なるべく多くの人に観ていただいて、できれば「語りたい」作品です。





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プライベートシネマ
” CINE ARCO IRIS ”
上映のお知らせ

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映画「グリーン・ライ~エコの嘘~」(2018年 / オーストリア / 97分)


■日時:9/10(土)10:30 ~ 12:10 


■場所:NIJIYA coffee 2階


■入場料:1,200円 (税込)


■参加方法

事前にチケットをご購入ください(4名さま限定)


■その他

・シネマご利用の方はドリンク10%引き

・お飲み物の持ち込み可(食事、おやつなど食べ物は不可です)



【 公式サイト 】


【About the film】

スーパーで見かける「環境に優しい」商品。 商品を買うと世界を救えるは本当?確かめるため監督自身が世界一周調査の旅へ出る。 「環境に優しい」「サステナブル」耳触りの良い言葉の裏側に隠された残酷な真実に迫るドキュメンタリー。


配給元:UNITED PEOPLE

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最後に「パーム油」について


映画では、パーム油の栽培のために、意図的にインドネシアの熱帯雨林が焼き尽くされた事例が出てきます。


「パーム油」は、ほとんどの既製品やスナックに使用されている原料。安価で使いやすいため世界で最も広く使用されています。



(c)e&a film


こちらの解説がわかりやすかったので、最後にご紹介します。


パーム油は、食用に8割、石鹸、シャンプー、洗剤などの日用品向けの工業製品に2割程度が利用されていると言われ ています。また大量の温室効果ガスを排出するため本来利用すべきではない発電向けのエネルギーへの利用も日本で近年 増加しつつあります。食用では揚げ油やショートニングなどに広く利用されており、即席麺やチョコレート、マーガリン、 パンを含めて様々な加工食品に使われています。また外食産業の食用油としても多く利用されています。日本の食品表示 では「植物油脂」と書くだけで「パーム油」と書く必要はありません。よって、多くの人はパーム油という名前すら聞い たことがないかもしれません。しかし、日本での利用は年間に60万トン以上あり、一人当たりで年間5kg も利用してい る計算になります。インドネシアから日本へのパーム油の輸入量は26万トン以上で、映画にも出てくるジャンビ州があ るスマトラ島からも来ています。日本の大手銀行も現地のパーム油関係の企業に資金提供を行っています。インドネシア ではパーム油を生産するためのアブラヤシ農園開発により、今も多くの森が失われています。そうした森の中には、オラ ンウータン、ゾウ、トラ、サイなど絶滅の危機にさらされている野生動物たちの生息地も含まれています。また農園開発 によって、泥炭地と呼ばれる地域から気候変動に悪影響を与えるメタンガスや二酸化炭素を大量に排出してしまう環境問 題や、土地を奪われる人々との土地紛争、農園運営の中での強制労働や児童労働を含む人権侵害が頻発しています。 こうした状況を改善するために、2004年に持続可能なパーム油のための円卓会議(R S P O)が設立されました。R S P O では様々な基準を定めて、その基準が守られているかどうかの確認を第三者機関が監査することになっています。 しかし、その監査体制が不十分であり、問題のある農園も R S P O 認証を取得している場合もあります。そうしたケース では、映画『グリーン・ライ』で取り上げたような、実態と異なる「嘘」の主張がなされてしまうことになります。ただ 認証制度では、基準を満たしていないような「嘘」がある場合には、苦情申し立てを行うことによって問題のある農園か ら認証を取り消したり、是正措置を行って基準を守るように求めるという手段もあります。しかし、グローバルな経済社 会の中で、普通の消費者が遠い生産地の状況を知ることは困難なため、上記のような手段を利用することは難しい状況に あります。よって、N G O(非政府組織)やジャーナリストなどからの情報提供が重要になります。一方で、より信頼の 高い認証制度として「パーム油革新グループ(POIG)」や各企業の調達方針の実施を通じて、問題のあるパーム油を排除 する取組も進められています。その一方で、インドネシアやマレーシアといった生産国の政府が進めている認証制度もあ り、それらは森林減少や人権侵害を排除できないような油も認証を取得できるような低い基準になっています。それにも かかわらず、持続可能性をうたっている認証もあるので要注意です。 この映画の監督が求めているように、問題となるようなパーム油の生産方法は法律を通じて禁止するといった措置を取 り、消費者の選択肢に委ねなくとも排除できるようにする方がよいという主張は、もっともな意見だと思われます。しか しながら実際には、インドネシアやマレーシアでは法律実施の実効性すらも怪しい状況にあるため、合法的な操業が行わ れているかどうかについても何らかの独立監査を通じた確認をしていかなければなりません。よって、合法性の確認すら も行われず、市場から排除されていないパーム油もあるため、認証制度や調達方針の遵守確認などを利用して、問題がな いかどうかを見極めていかなければなりません。その意味では、実情を確認するために、法執行体制の強化を進め、同時 に認証や企業の調達方針の確認体制の強化を進めることも必要になります。そうでなければ、この映画の監督が主張する ように「緑の嘘」がまかり通ってしまうことになるでしょう。むしろ、企業が嘘をつけないようにするための法整備の強 化も重要になるのかもしれません。

− 川上 豊幸(レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表)


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